皆さんこんにちは!おこげです。 たまには毛筆を書いてますか?
今日は、芸術的表現を行う上でも重要となる横線を変化させる方法について触れていきたいと思います。書道の場合は芸術としての要素がとても強く、例えるなら道具(筆、紙、墨、硯等)や書き方(点画の処理、文字全体の形、書き方等)に変化を加えることで様々な表現を行います。その結果、芸術面では様々な試行錯誤の結果成り立っているものもあります。そのうちの文字全体の形、書き方に関する変化について触れていきたいと思います。
【点画が文字に与える影響】
諸先生方や書道家の方々が綺麗(上手)に書きあげられた文字はどれも全体のバランスが絶妙に取られています。文字は点画で構成されていますので、それぞれの点画の位置、長さ、太さ、角度、曲線具合等の要素を計算して(または、されたかのように)それぞれの文字に対する適切な変化が与えられ書かれており、その点画の変化が最終的に書かれた文字全体に影響を与えているわけですね。色々なところで「黄金比」という言葉を聞きますが、書道の場合も上手に見せる、バランスよく見せる、カッコよく見せる為のポイントが有るのをご存じですか?
【横線の変化】
横線が上下に複数重なるような場合に上下の横線を同じ様に真っすぐ横に書くと単調になってしまいます。例えば漢数字の「三(さん)」を見てみましょう。横線が3本重なっていますね。活字体の場合は上下と中央の線で長さは違うものの、それぞれ真っすぐ同じ横線が引かれています。これを人が書いたもの(作品等)に置き換えると、単調で味気のないものになってしまいます。ですので、書道では古くから重なる横線それぞれに意図的に違う形状の変化を与えるようにされてきました。横線に与える変化については「俯仰(ふぎょう)・俯仰法・曲線」など様々な呼び方があり、先生方(または流派)によって技法名や表現等に違いがあるようです。ここでは多く呼ばれている「俯仰」という表現で統一します。(俯仰法という「用筆法」がありますので、その混同を避ける為。)
【俯仰(ふぎょう)】
俯仰とは、点画(または文字全体が)単調とならないように横線が複数重なる場合、上下の横線にそれぞれ適切な「しなり」を与える事を言います。
漢数字の「三」を例にして具体的に説明すると、上側の横線は上向きに (天を仰ぐように)しならせ、中央の線は真っすぐ平行(たいら)を保ち、下側の横線は下向きに(地に伏せる「俯す」ように)しならせる事を言います。この変化を与える表現「仰ぐ」「俯す」から「俯仰」と呼ぶ先生方や流派もあるのではないでしょうか?「俯」ですが、現在では「伏」という字が一般的に使われていますので、きっと昔は「俯」が日常的に使われていたのでしょう。
ちなみに、縦線に関連する変化「向背(こうはい)」と併せて「俯仰向背(ふぎょうこうはい)・俯仰向背法」とも呼ばれています。
「向背」については別の機会で説明します。
【書き方の変化】
書き方を変える事によって、点画の表情や表現に変化を与える事が出来ます。具体的には次の3つのポイントがあります。
①始筆時の角度を変える。
基本とされる角度(約45度)よりも鋒を寝かすか起こすか、又は筆自体を進行方向に寝かせるようにする事で始筆部の鋭さを変化させることができます。始筆時の角度が小さくなる(筆を寝かせる)ほど「刀の切先」の様に鋭く厳しいイメージになり、逆に角度を大きくする(90度近く)ほど鈍く丸いイメージとなります。
②送筆時に緩急をつける。
送筆時の筆の動きとして始めゆっくり、中ほど早く、終盤をゆっくり書く等の変化を一つの点画(線)で行います。緩急によって線に動き(躍動感)を与えることが出来ます。条件にもよりますが、かすれを加えることで更に表現の幅が広がると思います。
③始筆、送筆、終筆時の筆圧を変える。
筆の押し付け具合を強くするか又は弱くするかという事になりますが、これによって線の太い部分(強)と細い部分(弱)が生まれます。線に強弱が加わることで点画にメリハリが生まれ、文字全体が一段と引き締まって見えるようになりますし、躍動感や呼吸、書いている時のリズムも伝わってくる気がしませんか?
これらの変化を与えることで、普段書いている文字の表情が変わり一段と良い字に見えるようになると思います。毛筆だけではなく硬筆など様々な書くものに対応できる内容でもありますので、参考にしていただければ幸いです。
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