こんにちは!おこげです。
皆さん、たまには毛筆を書いていますか?
文房四宝の中から【硯】について前・後編に亘って唐硯、和硯や選び方などについてお話ししてきましたが、こちらの続編では【1.手入れ】【2.メンテナンス】【3.保管】についてお話ししていきたいと思います。是非、参考にしていただければ幸いです。
【 1. 手入れ 】
硯は、墨をおろし(磨墨「まぼく」して)溜めておく 為の道具ですね。ですので、磨墨する墨道(墨の丘)や、磨った墨を溜めておく墨池(墨の池)は常に墨液に触れています。墨(墨液)には膠(動物の皮などから作った接着剤の役目をするもの)が含まれていますので、乾燥すると固まります。ですので、使用後は硯についている墨が固まる前に洗い流しましょう。毎回洗うことで墨道にある鋒鋩が機能して、良い墨を磨ることができます。硯を洗わずに墨液を蓄えた状態にしておくと、鋒鋩が目詰まりをおこしてしまい発墨、墨色共に悪くなります。因みに、磨った墨を翌日に持ち越したものを「宿墨(しゅくぼく)」と言います。昔の文人は宿墨を大変嫌っていたそうで、「宿墨を留むれば則ち黒光りを損じ、積墨を留むれば即ち硯質を損ず」と言われていたそうです。つまり「宿墨の害は墨光を悪くし、硯質、筆先を損じ、磨墨の妨げになるから良くないよ。」要するに、宿墨は「百害あって一利なし」ということですね。
硯を洗う際は、スポンジを使うのが便利ですね。因みに私はメラミンスポンジを使用しています。鋒鋩の間に入り込んだ墨をよ~く落としてくれ、まるで新品の様に綺麗にしてくれるので、重宝しています。墨の落ちが良いので一度使うと癖になります。どうしても洗うのが面倒だという方は書き損じた半紙などでふき取る程度でも良いので、墨液が残らないようにしましょう。
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【2. メンテナンス】
硯は使用したら毎回洗いましょう。とお話してきましたが、もうすでに十分墨が固まってしまっているという人向けに、固まった墨の落とし方をお話しします。間違えてもマイナスドライバーなどの硬いもので突っついて剥がすことは、硯を痛めるので絶対にやめましょう。
①固まった墨を落とす
桶などの容器にぬるま湯をはって、そこに硯を浸します。程度にもよりますが約30分~1時間程度浸けておけば、固まった墨が緩んできますのでスポンジなどの柔らかいもので擦り洗いします。ある程度固まった墨が落ちるまでこれを繰り返し行います。宿墨が固まり積み重なっていくのに時間がかかった分、落とすのにも時間がかかるという事です。
②硯の再研磨(目立て)
切れ味の良い刃物も長く使っているうちに鈍ってきますが、硯も同じように使用しているうちに、面が摩滅して鋒鋩が弱ってきます。この状態になると墨道が光ってきて、磨墨をすると墨が硯の上をツルツル滑っている様な感覚になります。これではいくら長い時間墨を磨っても、思うような墨色が出ませんし、滲みやすくもなります。こういった場合は硯専用の砥石(泥砥石)を使って墨道を再研磨(目立て)し、新しい鋒鋩を出してあげましょう。手順は以下の通りです。
① 硯の墨道に、磨墨時よりやや多めに水をはる。
② 泥砥石の平らな面を墨道に密着させる。
③ 力を入れず(押し付けず)砥石を円形に動かす。
④ 磨墨に使用している部分のみ満遍なく研磨する。
⑤ 硯にはった水全体が研ぎ汁の色になったら、良く洗い流す。
※冒頭の動画を参考にしてみて下さい。
砥石は目が粗いものから細かいものがありますので、好みによって使い分けると良いと思います。粒度ごとに上の手順を繰り返せば問題ないと思います。砥石がない場合は、耐水サンドペーパーでも代用できます。個人的には400番~600番程度が良いと思います。
このようにして、再研磨をしてあげることで鋒鋩の弱い硯でも、墨を良く磨れるように成りますし、墨道の傷を消すこともできます。表面を研磨することで新たな石紋(斑紋)が出てきたりすることもあります。使用頻度によりますが最低でも年に1回、または墨の下りが悪くなった時に再研磨を行うと良いと思います。このように研磨した硯は味が出てくると同時に愛着もわいてきますね。
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【3. 保管】
日常的に使用している硯の場合は箱などにしまわず、風通しの良いところ(例えば机の上など)に置いておくのが一番良いです。 箱が付いている硯もあると思いますが、 使用して洗い終わった後、水分が完全に乾燥してから箱に収めるようにしましょう。押し入れや納戸などに保管している場合は、湿気にも気を付けたいところです。しまいっぱなしにせず、定期的に取り出して蓋を開けるなど、硯を新鮮な空気に触れさせてあげると良いですね。特に梅雨時はカビや細菌が発生しやすいので注意が必要です。もし、発生してしまったら 硯本来の姿がなくなってしまいますので気を付けたいところです。
これらの点に気を付けて使用することで硯は長持ちしますし、それぞれの質(特性)を生かした良硯にもなります。ものによっては数十年も永く使える様な名硯もありますので、大事に使っていきたいものですね。
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